対向車線

対向車線


上北沢 1613

16時。時計がそろそろ帰れと言っている。散歩を終えて歩きながら駅へ向かう。甲州街道を渡るために陸橋を超える。甲州街道の陸橋は眺めがいい。片側3車線、合わせて6車線の道を上から眺めるのは爽快だ。そして見上げれば新緑の梢に手が届きそう。

毎朝、決まった時間に決まった場所で初老のサラリーマンを抜き去る。朝の通勤時間帯の新宿の地下通路は混沌としている。縦横無尽に人が行き交う。自分の進みたい方向に人の流れが出来たと思ったら、その筋はすぐに消え去り別の筋に乗り換える。朝から集中力がいる。初老の人は右足が不自由で、足を引きずっている。だから、僕を含め注意深く彼を追い抜く。だけど、彼にぶつかったり、舌打ちをする人もいる。そして彼はいつも改札前に出来ている逆方向の大きな流れに身を投じる。対向車線を敢えて選ぶのは何故だろう。追い抜かれるより、立ち向かうことを選んだとすると、分かる気がした。