いつもひとり

いつもひとり


西新宿 12:22

西口に広がる公園は想像以上に広い。ようやく公園の西の端を出て一般道へ。そこはビルと住居が交じり合う、いわば汽水域のよう。真水とも塩水ともいえない、そういう空気を歩く人を見てもそう感じる。ベビーカーを押す小綺麗な女性。歩道橋の下でござを敷いて死んだように眠る人。髪を金色に染め、身体中から香水を垂れ流す人。新緑が眩しい空の下は黄昏ている。

歩道の端に座り込む二人が遠くに見える。男二人が寄り添っている。近づくと、一人の視線は空をさまよい、話しかけようとする隣の男のことは、彼の世界には入っていない。首が絶えず揺れて何かぶつぶつ空に向かって話してる。隣の男はそれでも、話しかけている。いつもふたりでいるのだろう。二人は別々の世界でいつもひとり。ここではいつもふたり。東京はそんな彼らにはとても優しく住みやすい街。そして僕も東京を愛する住人のひとり。