いつもふたり

いつもふたり


片瀬江ノ島 9:53

冷たい汐風にあたりたくなった。そして僕は早朝に電車を乗り継いで片瀬江ノ島駅に降り立つ。駅舎を出るとカモメと汐の香りが出迎えてくれた。空は厚い雲に覆われて肌寒い。歩行者用のトンネルをくぐり江ノ島海岸。砂浜へ降りて暫く歩く。ゆらめく船の帆とウインドサーフィンの帆が水面にむらがる蜻蛉の羽のよう。

朝のけだるい空気が汐風を止める。離れた舟の帆とウインドサーブの帆が再び重なる。その先の陽の光が眩しく、僕は手をかざす。砂浜の上に座り込む老夫婦。兄弟。女友達同士の観光客。ふたつの影が逆光に浮かぶ。

今日もいい日になるね。きっと。

小波の隙間から囁く声が聴こえる。