時計

時計


四条AM10:20

雪が舞いそうな冬空の下、街の目覚めは思いのほか遅く、時間を持て余す。しばし散策していると、古い煉瓦造りの建物に出くわす。異様な空気を放っているというより、むしろ、回りの空気を吸い込むブラックホールのよう。そばを歩く人も足早になる。

明治23年建造、と表示板にあった。保存され生き延びる。京都の町は巨大な養老院のようだ。延命装置につながれ、敬遠され負の空気をまき散らす。この空間だけ時間は止まり、そして歪む。「家邊徳時計店ビル」という名の通り、かつては時を刻んでいただろうに、今は時間を歪める。

時計を止めてはいけない。

止めたくなっても。