Top page > 星野道夫メモリアルプロジェクト@Miraikan レポート
星野道夫がカムチャッカの地に没して10年。 残した想いは人々の心を動かし続け、そして僕らは何かに呼ばれてここに集った。雷雨が去り、薄日が射す お台場の森の道を歩きながら、そんな気がした。
時折雷雨が吹き付ける。17時前に新宿へ降り立った。埼京線の「りんかい線」直通に乗る。
東京湾の花火大会が順延になり、懸念していた混雑もまったく無し。
雷雨だが、都合のいい天気だった。東京テレポートから木々に囲まれた歩道を歩く。
雨は止み、薄暗い中にも薄日が射す。
円形劇場をかなり縮小したようなホール。ステージに向かって一番左、前から2列目に席を取る。 手を伸ばせばステージに届きそうな距離感。 この席で星野道夫氏と触れ合う。
第一幕:池澤夏樹
池澤氏登場
早々と席に着く。ホール全体を見渡す余裕が無い。何せ前から2列目。後ろの様子が伺えない。
まだ30分以上ある。読みかけの司馬遼太郎を読み気持ちを落ち着かせた。
ライトが徐々に落ちてくる。
意表を突かれた。ホール中央席の後ろから誰かが降りてきてステージの上へ。
池澤さんだ。
池澤氏と星野氏の出会い
まず過去のTBSで組まれたプロジェクトの映像が投影された。池澤夏樹さんと星野道夫氏はこの番組で
初めて出会った。昨日公演を行った龍村仁氏に誘われる形で池澤氏はこの番組に参加。「顔を出さない」
という条件を付けたそうだ。
僕は初めてだ。「動いている」星野さんを見るのは。静かに語る、しかも、自分の世界に入りきっている。
自分自身の世界を持った人独特の雰囲気。自信というか、静かな威厳に満ちていた。池澤氏は記憶は定かでは
ないようですが、星野氏の作品を読み会ったことも無いのに「共感」を覚えた。と静に語り始めた。
星野氏も池澤氏の周囲から送られた本を手に取った。彼らは会う前にして既に「会っていた」。池澤氏もそう
思っていたに違いない。このTBSの番組ではじめた会ったとき「嗚呼、やっぱり」と思ったようだ。
生と死
雑誌Coyoteの星野道夫特集で僕は初めて星野さんのことを知った。それまで存在すら知らなかったが、 そこに書かれていた文章が強烈に僕の頭の中に残っている。池澤氏の話を聞いて僕はこの号に載っていた 星野氏と親交が深かった湯川豊氏の記事を思い出した。
追い詰められたカリブーが、もう逃げられないとわかった時、まるで死を受容するかのように諦めてしまう
ことがあるんだ。あいつらは自分の生命がひとつの繋ぎに過ぎないことを知っているような気がする。
〜ニック・ジャンが星野へ語った言葉。
オオカミに追われ、危うく逃げ失せたカリブーが、その5分後には何も無かったようにツンドラの草を食べている。
死はあれほど近かったのに、カリブーはもうすっかり忘れているのだろうか。動物たちにとって死とはそれほど
小さなことなのだろうか。
〜ニック・ジャンと語った「おおげさではない死」
私が読んだ星野道夫の●「アラスカ 風のような物語」の感想はこちらへ。●「旅をする木」の感想はこちら
第二幕:山口智子
森の妖精
ライトが完全に落ち、何も見えない。
ステージからマッチをする音がかすかに聞こえる。
蝋燭が1本灯る。
山口智子さんの顔が漆黒の闇に浮かぶ。そして次の蝋燭そして。。6本くらい灯っただろうか。
彼女は静かに朗読を始めた。森の妖精が語っているようだった。
雰囲気に呑まれたのか、見とれていたのか
幻想の世界にいた。きっと僕は満点の空の下にいる。
星野さんはエスキモーやクリンギットの古老とテントの中で「神話」について語り明かした。
きっと蝋燭の炎の前で、このときのように。
そして僕は目を閉じて聞いていた。アラスカの星空の下を想像するために。そして山口智子さんが目に入らないように・・・。
何を語っていたか。よく覚えていない。雰囲気に呑まれていた。感動的なひと時。
覚えているのは・・山口さんはプロの女優さんだ。ということ。微妙な立ち居振る舞い。一挙手一投足を見られていることを 承知の上で大胆な動き。向く角度を微妙に買え、あらゆる角度で自身を見せる。そして観客に平等に自身を見せようとする。 そういう、彼女のプロ意識について、ずっと考えていた・・・。ようは、彼女に見惚れていた。そういうことだ。 隠してもしょうがないね。
第三幕:ボブ・サム
おごそかに。
何か使命を帯びていることが一目でわかる。その低く響き渡る声を一言耳にするだけで、
一気に神話の世界に引き込まれる。ボブ・サムの背後に巨大なワタリガラスが羽を広げて居る。
そんな光景が浮かぶ。彼は鷹になり、ワタリガラスと対話を始めた。
我々動物はおろか、木々も魂を持っていなかった。 ワタリガラスの神話は人が魂を持つに至るまでを語った物語です。 ボブ・サムがワシとなり、羽ばたく。真っ暗な満天の空へ飛んでいく。 不思議な光景に震えた。
第四幕:僕たちは
宣誓
僕たちは「星野道夫メモリアルプロジェクト」のプロジェクト立上げの儀式に集い、
そしてボブ・サム氏とともに宣誓をした。少なくとも僕はそう感じました。
アラスカの大地にトーテムポールを建てるというプロジェクトに僕らは参加することになった。
いい意味で騙されたのだ。僕らは強制的にプロジェクトのメンバーになった。
強制的とはいえ、ここに集まった人は「本望」だと思う。
トーテムポールって高校の頃に作ったのは数メートルくらいだったけど、アラスカにあるのは3階建てのビルくらい
あるそうだ。これからどういう計画で進んでいくかわかりませんが、Switchのホームページで報告されるそうです。
何か僕もしたいと思っています。こうやって伝えることもできますし。何か少しでも。
祈り。そしてありがとう。
ボブサムから、クリンギット?の言葉で「ありがとう」を教えてもらった。皆で復唱した。「もっと大きな声で!」
皆が一つになり「ありがとう」と叫んだ。ボブはワシが羽ばたく形をとり「ホー。ホー。」と。
ボブの願いで、星野氏へ黙祷を捧げた。日本の黙祷より明らかに長かった。何か意味があるように思えた。
私はだた、ありがとうと心の中で伝えました。
稚拙なレポートでしたが、心に残る催しでした。抑えられた演出がとても良かった。
終わったときは外は暗闇。来る途中に歩いた森の道は闇の中。その時は何も感じなかったが
帰りは誰かに見られている気がした。たくさんの何かに。









